2022年サッカーW杯グループリーグ日本対ドイツ戦を「ドーハの奇跡」と呼べるのか

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《以上広告アナウンスでした。以下本文》

歴史は繰り返す、一度目は悲劇として、二度目は喜劇として

2022年11月23日。日本では、祝日の勤労感謝の日の夜。カタールで行われたサッカーワールドカップのグループステージ、ドイツ対日本戦は、1-2で日本が逆転勝利した。

(参考)
日程・結果│FIFAワールドカップカタール2022|SAMURAI BLUE|日本代表|JFA|日本サッカー協会

(参照2022-11-25)

会場は、カタールの首都ドーハ。1993年に日本代表がアジア最終予選で最後の最後に同点に追いつかれ引き分けとなってWカップ初出場を逃したことは、その地名を冠し、「ドーハの悲劇」と語り継がれてきた。

そして、今回、その地で、格上と見られていた相手に、逆転勝利を収めたことで、

「悲劇から歓喜へ」
「ドーハの奇跡」

などと呼ぶ向きもある。

果たして、今回の勝利が本当に奇跡なのか、過去のスポーツにおける「○○の奇跡」を振り返って、考えてみたい。

[公開:2022/11/27の日本対コスタリカ戦が開始される直前]

当記事は、過去におけるスポーツ界の奇跡について述べた当ブログ記事
サッカーW杯日本対コロンビア戦を「サランスクの奇跡」と呼べるのか[公開2018/06/24]
ラグビー未経験者が2015年W杯日本対南ア戦のすごさに感心し、いかに初心者に伝えたか[公開2018/06/28]
2019ラグビーWカップ「日本対アイルランド戦」について、「これは奇跡ではなく必然の勝利だ」と初心者のくせにもっともらしく語ってみた話[公開2019/09/29]
等を踏まえたもので、そこで紹介した過去の例の詳しい引用先の例示は、当記事では一部省略していますのでご了承ください。(といっても、ネットで調べた情報ばかりなので、今回の当記事で分からないことがあっても、元記事を見るよりはググった方が早いと思います。)

1.スポーツにおける「○○の奇跡」と限界

スポーツ界では、番狂わせが起こると、それが行われた地名(会場)を冠して、

○○の奇跡(あるいは悲劇)

と呼ばれることがある。

地名と奇跡の言葉だけで、それが何を指すのかを、多くの人に思い起こさせるほどの、インパクトを残す。

ただその一方で、「奇跡」というのは、本質的に、そんなに頻繁に起こることではない。奇跡も、頻繁に起こってしまっては、必然になってしまう。

「奇跡」を際立たせるのは、その前後の、逆の結果だ。

過去の日本サッカー史での奇跡と言えば、「ベルリンの奇跡」(1936年)、「マイアミの奇跡」(1996年)が挙げられる。

これらも、当初の多くの予想に反して、当時の世界の格上相手に勝利をした「奇跡」だ。

だが、その奇跡の勝利のあと、敗退しているのも事実だ。「ベルリンの奇跡」ではトーナメントの次の試合に負けて敗退、「マイアミの奇跡」では得失点差でトーナメント進出を逃している。

「奇跡の勝利」後に敗退したことこそが、その勝利を「奇跡」だと示すことになり、「○○の奇跡」とは、そのあと敗退した事実を伴う現象であり、限界でもある。

サッカーW杯日本対コロンビア戦を「サランスクの奇跡」と呼べるのか(参照2022-11-27)

2.「奇跡ではなく必然」とすることができるか

日本ラグビーでは、2015年Wカップグループリーグでの南アフリカ戦での勝利が、「ブライトンの奇跡」と呼ばれた。

だが、この「奇跡」も、グループリーグ敗退という結果に終わった。

その4年後の次の大会、2019年ラグビーWカップグループリーグでは、日本は、格上のアイルランド戦で勝利した。これも快挙であることには間違いないが、多くの人にとって、「奇跡」という言葉は否定されるものになった。実際、グループリーグを首位で進出を果たし、結果を残した。

選手たちだけではなく、報道する側も、「奇跡ではなく必然」という言葉が納得感を持って語られるようになっていた。[当ブログ記事”2019ラグビーWカップ「日本対アイルランド戦」について、「これは奇跡ではなく必然の勝利だ」と初心者のくせにもっともらしく語ってみた話”参照

では、今回のドイツ戦での勝利は、「奇跡」になるのだろうか。

今回のドイツ戦での勝利後のインタビューを見る限り、選手たちは勝利の高揚感があるものの、これまで準備していたこと、次の試合を見据えていることを、冷静に答えている印象があった。[個人の感想です]

選手にしてみれば、今回の勝利は、奇跡でも何でもなく、これまで積み重ねてきたことが結果として出たにすぎず、また、通過点でしかない。

中心にいる選手ほど冷静で、そこから離れるほど興奮しているのが、今の状況なのだろう。

周りにいる人間は、今後の結果でしか、今回の勝利が「奇跡」だったのか「必然」だったのか、知ることができないのかもしれない。

3.今回の勝利が「奇跡」になるかどうかの分かれ道となる次の試合は?

当記事を書いている現時点で、日本のグループリーグでの試合は、各チームが1試合を消化しただけだ。[2022/11/27の予選2試合目の開始前]

ニュース番組や新聞等では、多くの場合、「日本が次のコスタリカ戦で勝利し、スペインがドイツ戦で勝つか引き分ければ、日本の決勝トーナメント進出が決定」、と報道されている。(個人の感想です)

実際にそうなれば応援するファンにとっては喜ばしいことかもしれないが、「そう上手くいくのか」と心配になるのもファン心理としてあるだろう。

まず、コスタリカ戦での勝利を、順当なものとして見ているが、そこに落とし穴はないのか。

コスタリカは初戦のスペイン戦で7失点しているが、逆に言えば、得失点差を考えたとき、ただ勝つだけでなく、大量点を取る必要があるのではないのか。逆に、大量点を当たり前のものとしてしまい、そこに落とし穴はないのか。

さらに、ドイツがスペイン戦で引き分けか負ける可能性を、無邪気に期待するのは危険ではないか。

ドイツは初戦の日本に敗れたことで厳しくなったが、トーナメント進出の可能性がなくなったわけではない。むしろ、後がなくなったことで、スペイン戦の勝利に向けて全力を尽くすだろう。ドイツがスペインに勝ったとしても、「奇跡」とは言われない。日本に負けたからスペインにも負けるだろう、というのは安易すぎるだろう。

仮に、ドイツがスペインに勝利した場合で、日本がコスタリカ戦で勝利したとしても、追いつめられるのは、むしろ日本だ。

このケースでは、日本が2勝で、ドイツ・スペインが1勝1敗で、コスタリカが2敗の状況になる。予選最終戦では、日本対スペイン、ドイツ対コスタリカの試合が行われる。決勝進出をかけて、スペインとドイツは全力で勝ちに来る。ここで、ランキング通り勝敗が決まると、3チームが2勝1敗で並ぶことになる。そうなると、上位2チームの決勝進出は得失点差で決まる。

この場合、コスタリカ戦での得失点が大きな比重を持つ可能性が高い。スペインが7-0で買った意味が非常に大きくなる。そしてまた、日本がコスタリカ戦で勝つだけでなく、何点差で勝つか、そしてスペイン戦で何点差で負けるかも重要になってくる。

もちろんこれは、想定される一つのケースを述べたにすぎず、実際には起こらないかもしれない。コスタリカ戦で大量得点を狙うあまり、足をすくわれる恐れもある。

ただ、1996年のアトランタ五輪での「マイアミの奇跡」では、まさにこのことが起こった。ブラジルに勝利しながら、2勝1敗で3チーム並んで得失点差でトーナメント進出を逃すことになった。

次の、コスタリカ戦での得点差を含んだ結果、ドイツ-スペイン戦の結果次第で、「奇跡」の行方が、見えてくるかもしれない。

次の2試合がどうなるか、日本戦だけでなく、スペイン-ドイツ戦の結果にも注目したい。


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