高校野球DH制導入の問題点は「大谷ルール」ですべて解消するのか?

《広告》

この記事のこの場所に「この記事には広告が含まれます」という一文が目立つように書いてあります(自画自賛?)
《以上広告アナウンスでした。以下本文》

2026年春から、高校野球で、指名打者制(DH制、designated hitter)と、それに伴い(いわゆる)「大谷ルール」が導入される方向であることが、先日報道された。

高野連=日本高校野球連盟は、選手の出場機会を増やしピッチャーの負担軽減を図ろうと、来年春の公式戦から指名打者制を導入することになりました。

《中略》

先発投手が指名打者としても同時に出場し、ピッチャーを交代したあともバッターとしてそのまま試合に出場できるいわゆる大リーグでの「大谷ルール」も採用されます。

高校野球 指名打者制導入へ 2026年春の公式戦から 高野連 “大谷ルール”も採用 なぜ導入?【詳しく】 | NHK | #高校野球、2025年8月1日 20時53分。(参照2025-08-22)

興味深い内容だが、私は競技者でも関係者でもないので、その賛否については、ここでは触れない。

ただ、気になったのは、「大谷ルール」があればすべて解決、と思ってしまいそうな状況にあることだ。(個人の感想です)

自戒を込めて述べると、「オオタニさん」の名前がついていれば、不可能を可能にしたり、あり得ないと思っていた状況をリアルに再現できるのではないかと、思いがちだ。(あるいは、逆に、元通訳にスポーツベッティングで約1700万ドル不正送金された被害にあってもしばらくたってみれば何ともないぜ、と見えてしまったり・・・、以上は個人の思いがちです)

高校野球でDH制を導入する際に想定される問題点も、「大谷ルール」があればすべて解決、と説得されそうになる面があるのは否めない。(個人の否めないです)

よくよく考えれば、スゴいのは大谷選手であって、「大谷ルール」がスゴいのではない。「大谷ルール」を作らせたオオタニサンがスゴイ。(セカイのオオタニです)

そこで今回は、いわゆる「大谷ルール」がなぜ導入されたのか(逆に言えば「なぜオオタニ以前に存在しなかったのか」)を考えてみることで、高校野球でのDH制導入に伴う「大谷ルール」の採用によって、なにが解決し、なにが問題点として残るのかを、想像してみたい。

[公開:2025/08/23]

指名打者で注目する点

指名打者については、公認野球規則で定められているので、最新で正式なものを参照していただきたい。(私はその文書や冊子を持っておらず、公式と思われるサイトからも見つけられなかったため、ネットで参照できるものからの再引用には問題があると判断し、当記事では省略します)。

ただ、一般的な内容については、上記でのNHKニュース記事(参照2025-08-22)での解説があるので、それを参照してもらえば、十分だろう。

当記事で話を進めていく上で、押さえておきたいのは、

指名打者は
・投手の代わりに打席に立つ打者
・チームとして使っても使わなくても構わないが、使うときは初めから使わなければならない(途中から使うことはできない)
・投手が打者(走者)になる、または指名打者が守備につく、または他の守備者が投手についた場合は、指名打者の役割は終了(以降はDH制を再導入できない)
・指名打者が投手以外の守備位置についた場合は、投手はその元守備位置選手の打順を引き継ぐ

(個人的なルール解釈の一部分をまとめたものであり、正確性に欠ける表現である可能性があります)

といったところだ。

ルールには、これをやってもいい、という反面、これはやってはダメ、という面がある。

この中では、指名打者は「途中から使うことはできない」とあって、何故ダメなのかは、一見分かりにくいかもしれない。(特に、大谷ルールが採用された後では)。

指名打者制を試合途中から使うことが問題になるのは、使いようによっては偵察メンバーを使わずに相手オーダーを把握して実質先発オーダーを変えることができたからだろう。

(以下は、「予告先発制度」や「投手は3人以上の打者に投げなければならない」、などの制限がなかった状況を想定したものとして、話を進める。)

仮に、1回表の攻撃側が、指名打者を想定しておきながらあえて指名打者を使わずにその打者の守備位置を投手として9人の先発メンバー登録した場合。攻撃終了後に、指名打者を使用して(攻撃オーダーを代えないまま)投手を出せるのなら、相手オーダーを確認して、後出しで先発投手を選べることになる。

(補足:それを防ぐために、「投手は○人以上の打者に対して投げなければならない」というルールが作られたかもしれないが、これさえも、ランナーに出すことを許容さえすれば○人分申告敬遠をして仮の先発は一球も投げずに次の投手を引き継ぐことも、ルール上、可能に見える。)

逆に、1回表の守備側も、指名打者を想定しておきながら投手を打者として9人の先発メンバー登録をしておき、守備終了後に、投手の打順のところで指名打者を使って打者を出せるのなら、相手投手を確認して、後出しで先発指名打者を選べることとなる。

野球では表と裏で、守備と攻撃が入れ替わる。途中から指名打者(投手専任)を使えるようにした場合、攻撃側にも守備側にも利用の仕方によってはどっちにも利点があるということでは、どっちもどっちかもしれないが、先攻か後攻かによって、利用できる内容が異なるのは(先攻は投手の後出し、後攻は指名打者の後出し)、公平さという点で問題がある。特に、トーナメントのような一発勝負の場で、先攻後攻で条件が異なるのは問題だろう。(先攻後攻である程度の条件が異なるのは野球の性質上仕方がないが、できるだけ不公平さを無くすことが大前提)。

このような理由から、指名打者制を試合途中から使うことはできなくしたと考えられる。(個人の解釈です)

備考:
ちなみに、ソフトボールでも、DHに似た制度として、DPが存在する。ソフトボールのDPは野球のDHよりも自由度は高い(が複雑になっている、個人の評価です)が、そのソフトボールのDPでも、DPはチームとして使っても使わなくても構わないが、使うときは初めから使わなければならない(途中から使うことはできない)、ことになっている。(記事公開時の個人的なルール把握です。ソフトボールのDPについては後述)。

また、DH制を利用していた投手が打席(または走者)に入ったり、指名打者が守備についたり、他の守備者が投手へと交代した場合、指名打者の役割は終了し、再導入できなくしている。

これも、一見すると、何が問題か分かりにくい。(これも、大谷ルールが導入された今となっては)。

ここで禁止されているのは、

DH制で試合開始 → DH制解除 → DH制再導入
(投手と打者は別人)→(投手と打者は同一)→(投手と打者は別人)

という流れだ。1項目でスタートして2項目(指名打者の役割終了)に移行することまでは可能だが、3項目(指名打者制の再導入)への移行は禁止されている。(個人のルール理解です)

2項目からスタート(先発)して3項目へと代えるのは、実質、(DHと投手を明記した上で先発のみに認められている)「大谷ルール」のケースと同じなので、(現時点では)「大谷ルール」で可能になっている。

その意味では、再導入が禁止されているのは、上記で述べた、「(DH制を)途中から使うことができない」のと同じ理由(後出しでメンバー交代が可能になる不公平さ)からも説明できるかもしれない。

「大谷ルール」が認められたのなら、途中からの「大谷ルール」も認めてもいいのではないか、と思ってしまうが、それが認められない(より大きな)理由、として考えられるのは、投手交代によって守備位置や打順の変更が伴った場合の複雑さに対応しきれないことだろう。

たとえば、投手はそのまま続投で、DH選手が(投手以外の)守備についた場合、その守備位置に元いた選手ははじき出されて試合から退くことになる。これによって、DH制は解除され、9人で守備と攻撃を行うことになり、(守備専門だった)投手は「(DH選手に)はじき出された守備位置の選手がいた打順」に打者としても打席に立つことになる。ここまではルール上認められている。

この時点でもう充分複雑すぎるのだが、そこにさらにDH制の再導入を認めた場合、その時の(先発時とは異なる)投手の打順に(守備を考慮しなくていい)新DH選手を出せて、そのまま継続できることになる。これが認められると、守備時(特に二死後)に、次の回の攻撃をにらんで代打を出したい打順の守備者とDH選手を交代(DH制の解除)し、その打順に投手が入るようにして守備終了後の次の攻撃にDHを再導入して(先発時と異なる)投手の打順に新DH選手を出せることになる。

もちろんこれを防ぐために、交代後は「必ず一打席に立たなければ」、「必ず何人に投げなければ」などの追加ルールを作ればいいのかもしれないが、複雑さに複雑さを重ねるようで、実用的でなくなるだろう。

補足:
ちなみに、ソフトボールでのDPでは、投手以外の守備位置でも守備専門とすることができ、打撃専門が守備(打撃兼用)についたとき、その守備位置だった者を打順そのままで打撃専門とすることもできるなど、自由度は高い。ただ、その分ルールも複雑になって、様々な用語の定義が追加され、許されることと許されないことの条文が長くなっている。ここまでくると、もういっそのこと、アメリカンフットボールのように、守備陣と攻撃陣を完全に分けた方がスッキリするのでは、とも思ってしまうが(個人の感想です)、もっとも、このあたりの考え方は、野球の理念にかかわることであり、「打って守って走れる」選手が基本(ただし一人の投手と一人の打者のみ例外)としているのなら、どこまで認められるかは、限界があるだろうとも考えられる。

さらに言うと、いったんのDH解除後に再び導入することが問題となるのは、代わりの選手を起用せずに実質的な代打を使用できたり、(意図的な)打順飛ばしも可能になるからだろう。

仮に、DH解除後の再導入を認めてしまうと、(守備もしくは打者として)退いた人間が同じポジションで(守備もしくは打者として)再出場できることになる。

たとえば、初めはDH制(投手と打者は別)で、その後に解除(投手・打者兼任)し、その途中の打席で苦手相手ピッチャーが出てきたら再DHで別の打者に代打で打たせ(投手継続とDH採用)、次の打席が回ってきたら再びDHを解除して自分(投手・打者再兼任)が打つようなことができてしまう。これは、打者として試合に退いていながら、再び打席に立っているので、実質、再出場が認められることになる。現時点で、野球では、再出場は認められていない以上、このような利用をされることは禁じるしかないだろう。(記事公開時の個人的なルール把握です。)

その上、途中で投手の打順が代わったり、別の打順の選手が投手になったりするケースまで考えると、更なる抜け穴を防ぐための新たなルールを設定する必要が出てきて、複雑なものになってしまうのは避けられないだろう。(極端な話、ベンチにコーチやスコアラーと同様の立場で、ルールをチェックさせるベースボールロイヤーという資格でも作って同席させなければならなくなるかもしれない)。

補足:
DH制を再導入できない方針は、他にも、(先発メンバーに限られている)「大谷ルール」を途中から導入及び解除後継続できなくしている、ことでも徹底している。
「大谷ルール」では、先発時点での投手兼DHの打順の位置が一致していて、途中から解除しようが、試合終了まで、(先発)投手兼DHだった選手の打順は変わらない。打順が変わらないという点もあって、「大谷ルール」はスムーズに導入されたとも言えるが、その「大谷ルール」でも、いったん別々の選手で投手と打者を分けたあとに、先発後に投手交代してDH専属になった元先発を再び投手に戻すことはできなくしている。

補足:
「DHが(投手以外の)守備についた場合にその元いた選手の打順に投手が入る」ルールは、「大谷ルール」を採用した上で「DH代打・投手専任」となった後の「DHが守備についた」場合、矛盾が生じる可能性がある。具体例については後述。

「大谷ルール」以前

以上のような理由から、野球でのDH制には、

・使うときは最初から
・途中から導入できない
・投手が打者(走者)を兼務、または指名打者が守備についたらDH制は解除
・解除したら再導入できない

という決まりがあった。(個人の解釈によるまとめで正確でない場合があります)

このルールでも、問題なく回っていた。

オオタニ選手が大リーグに入ってからも、このルールで出場していた。

基本的には、大谷選手は、

先発投手として専念するときは、投手専任
指名打者として専念するときは、DH専任
先発投手と打者と両方で出場するときは、DH制を不採用

として、状況に応じて、使い分けていた。(時には、途中から外野守備についたり、まれに途中から投手として出場したりも。)

ただ、「DH制は使うときは最初から」、「投手が打者を兼務した場合はDH制は解除」というルールのため、「先発出場で投手と打者を兼務した場合」はDH制は使えず、途中から(打席に立たずに)投手のみとしたり、あるいは(守備につかずに)DHのみとすることは、できなかった。

ところが、2021年の大リーグオールスターゲームで、「特別ルール」として、それが可能になった。いわゆる「大谷ルール」だ。

「特別ルール」として導入されたのは、大リーグのオールスターの性格によるところが大きい。

・(日本と違って年)1試合のみ
・(出場予定のない選手以外の)選ばれた多くの選手を試合に出場させる必要がある
・選手を多く出場させるにはDHを使用したい
・大谷選手はDHと投手の両方で選ばれた

この条件で、大谷選手を打者と投手で出場させ、かつ交代後もDHを継続使用できるようにするために、特別ルールとして、先発投手が指名打者を兼ねることができ、投手が交替しても指名打者を継続でき、別の選手が投手、また別の選手が指名打者をそれぞれ引き継げるようになった。

多くの選手を出場させる必要があるオールスターのお祭り的要素もあるが、そのシーズン前半戦で大谷選手が打者と投手の両方で「スター」にふさわしい成績を残していて、打者と投手の両方でオールスターに選出されたことが、あらたな「特別ルール」を産み出した要因として、一番大きいと言えるだろう。

「大谷ルール」の導入

オールスターでのその「特別ルール」は、翌シーズンから、大リーグでは通常ルールとして採用されるようになった。(さらにその後、日本でもDH制採用リーグで適用されるようになった)。

現状では、実質、ほぼ大谷選手だけを想定したルールなだけに、やっかみのような批判的な意見も無くはなかったかもしれないが、それほど問題なく受け入れられ、その後も特に問題なく運用されているようだ。(批判する方は何を言ってもやっかみとしか見られない状況にしてしまう大谷選手はやっぱりスゴイ。個人のやっかみです)。

いわゆる「大谷ルール」を導入したからと言って、他のチームや選手によって、「悪用」とも言える様な使い方はされていないようだ。

補足:あえて言うなら、先日、大谷選手によるケガからの復帰テスト登板で1イニングだけ先発することを批判する意見もあったようなので、今後もこのようなケースが他のチームによって利用される可能性はなくはない。通常のテスト登板は、(消化試合でもない場合)試合展開に応じて試合途中から投げることがほとんどで、いつ出れるか分からない状況で準備をしておく必要がある。その意味で、前もって準備できる先発でテスト登板できるのは、確かに少しズルいような気もするが、逆に言えば、大谷選手ほどの実績が無ければ使われないケースであり、他の選手に「悪用」されるかと言えば、チーム状況やそれなりの実績がない限り、難しいだろう。

問題がないのなら、初めからそうしておけばよかったのに、と後付けで思ってしまうかもしれないが、DH制のルールが固まった当時と、現在の状況とでは、異なっていることを留意する必要がある。

先に述べたように、DH制で様々な制限(使うときは初めから、途中から使うことはできない、など)があった要因として、考えられるのは、後出しによるメンバー変更の悪用を防ぐこと、だろう。

予告先発制度がなかった以前は、相手先発投手を予想して先発メンバーを決めることが普通で、相手投手が読めないときは、偵察メンバーとして代えることを前提とした選手をスターティングオーダーに紛らわすことがあった。

DH制のいくつかの制限は、こういった、相手チームのオーダーを確認してからの後出しによるメンバー変更を防ぐために設けられたと考えられる。

だが現在において、状況は変わってきている。「予告先発制度」や「投手は打者3人以上投げなければならない」、「先発した指名打者は(投手が交代しない限り)初めに打席に立つ前に交代できない」などのルールが設けられたからだ。(現時点での個人のルール理解によるまとめで、正確ではない場合があります)

中でも、一番大きいのは、「予告先発制度」だろう。

先発投手が事前に分かっているのなら、偵察メンバーなど不要になる。そうであれば、「大谷ルール」を偵察メンバーの代わりに「悪用」する必要もなくなる。

「大谷ルール」は、これまで制限のあったルールを一部解除したものであるが、過去には制限をかける必要のあった状況(偵察メンバーを使ってDH制を「悪用」する状況)が存在しなくなった(「予告先発制度」の導入により)現状では、(その点に限って言えば)不要なルールになった、と言えるだろう。だからこそ、導入後に特に問題も起きていないと解釈できる。(個人の解釈です)

「予告先発制度」とのセットと考えたときの「大谷ルール」の問題点は?

「大谷ルール」が問題なく運用されている理由の一つが、「予告先発制度」だと解釈した場合。

では、高校野球で、DH制(と「大谷ルール」)を導入するとして、「予告先発制度」もセットで導入するのかと問われれば、答えるのは難しい。

高校野球での「予告先発」を導入するにしろ導入しないにしろ、メリット・デメリット自体が、両方とも薄いように感じるからだ。どちらにしろ、判断するのに、決定的な理由が存在しないように思える。(個人の感想です)

「予告先発」の最大のメリットは、商業的な理由だろう。先発投手を知ったうえで、チケットを買う。またテレビ中継では、事前に番組欄に先発投手の名前を書き込める。(特に大リーグの中継では「日本人投手先発予定試合」などと宣伝される)。一方で、高校野球は(表向きは)商業的な理由は不可である以上、先発投手をアピールする意味がない。

また、先に述べたように、「予告先発」によって相手先発投手を確認後にメンバーを代える「悪用」を防ぐというメリットも、高校野球においてあまり大きくない。「予告先発制度」が主に機能するのは、長いシーズンの連戦で先発投手が複数人でローテーションを組んでいる時であり、トーナメントのような一発勝負、ましてや、主戦投手が限られていることの多い高校野球で、予告先発をする意味はあまり大きくない。仮に「予告先発制度」を強制的に導入したとしても、相手の情報も無く初顔合わせとなるケースでは、「予告」されても適切なオーダーを組む判断のしようがないからだ。さらに、ベンチ入りメンバーが限られている状況で、偵察メンバーを使う余裕もあまりないだろう。

言ってみれば、高校野球の試合では、「予告先発制度」は(実質的に)使えないケースであることが多い。

そもそも、予告先発を導入するとして、どのように運営するのかという問題点もある。(試合前のいつまでに提出、いつどこに公示するのか、どのような理由だったら交代可能なのか)。

その意味では、高校野球に(DH制と)「大谷ルール」を導入しても、「予告先発」は採用されない可能性は高い。また、高校野球において「予告先発」のメリット自体が大きくないので、採用しなくても「大谷ルール」は問題なく運営される可能性も高い。この点については、杞憂なのかもしれない。

ただその一方で、仮に、「大谷ルール」導入と「予告先発」不採用の組み合わせになった場合、ルールとして認められた以上、それを「利用」するチームが出る可能性は残る。

特に、強豪校と呼ばれるようなチームでは、選手層、情報網などがいずれも厚いので、それをフル活用して、「1イニングだけの偵察投手」、「1打席だけの偵察DH」を使用する可能性はある。良いか悪いかではなく、ルールとして認める(制限しない)のであれば、こういうこともできるということは、考慮しておくべきだろう。

補足:
これらはいずれも、「投手は3人以上に投げる」、「指名打者は(先発投手が交代しない限り)1打席立つ」などの(大リーグ等での)制限があることを想定している。仮に高校野球でこれらの制限が無ければ(もしくは「3人以上」が「1人」になるなどより制限が緩くなれば)、「悪用」できる自由度もより高まることが想定できるので、「大谷ルール」の導入と共に、(従来の高校野球規則との兼ね合いで)今後どのように設定するかは、注視すべきだろう。(今回の報道時点での個人的なルール理解による想像です)

「選手の可能性を狭める」可能性がある「大谷ルール」の問題点

高校野球でのDH制の問題点として、よく言われていたのが、

「高校の時点で、打者専門と投手専門で分けてしまうと、大谷選手のような投打で活躍できる『二刀流』の可能性を狭めてしまう」

というものだった。(個人の感想です)

「そこで(いわゆる)『大谷ルール』を採用すれば、投手と指名打者で試合に先発でき、DH制を導入しても、今後、大谷選手のように投打で活躍できる」

という理屈らしい。(個人の解釈です)

だが、ちょっと待ってほしい。実際は、

オオタニサンは「大谷ルール」で育ったのではなく、オオタニサンが「大谷ルール」を育てた

のではなかったか。

当たり前だが、「大谷ルール」に従っていればオオタニサンになれるわけではない。

また、大谷選手は、高校生の時からオオタニサンだったわけでもない。

「大谷ルール」を作り出したのは大谷選手の積み上げた成績があってこそであり、「大谷ルール」を(チームとして)採用するのは大谷選手のような実績を持つ選手に対してのみである。

そもそも、先に述べたように、DH制は、途中からの導入もできないし、いったん解除した後に再導入はできない。また、投手とDH制を兼任ができるのは先発選手のみであり、他のプレイヤーに(兼任を)引き継ぐこともできない。

その理屈で言えば、「大谷ルール」で可能性を広げているのは先発投手のみであり、以降のリリーフ投手と指名打者は可能性を狭められていることになる。

「大谷ルール」で「可能性」を広げているのは、「大谷ルール」に対応できる(成長後の)オオタニサンだけ、という、身もふたもない結論になる。

「大谷ルール」は、オオタニサンにしか扱えないルールであり、他のプレイヤーにとっては可能性を狭めるものではないのだろうか・・・。

・・・と、少々、ヘリクツっぽく話を進めてしまったが、話を実態に即したものに戻す。

「大谷ルール」によって、「選手の可能性」を広げるか狭めるかについて、一番の論点となっているのは、

「大谷ルール」で出場した先発投手兼指名打者は、(投手を)退いたとしても、指名打者としては出場し続けることはできるが、

再び投手として出場することはできない

ところだろう。(個人の検索結果による感想です)

備考:
なお、このルールは、(「大谷ルール」での)指名打者の方にも同じように適応されている。上記の「投手」と「指名打者」を入れ替えて、「(指名打者を)退いたとしても、投手としては出場し続けることはできるが、再び指名打者として出場することはできない」、となっている。

つまり、「大谷ルール」では、一度投手を退いたら、DHとして試合に出続けていたとしても、その試合では、再び投手としてマウンドに上がることはできない。

これは、特に高校野球では、大きなネックになる。

先発投手に代えて控え投手を出す際に、控え投手が乱調する可能性を考えてその先発投手を他の守備位置につけて再登板に備えるケースはよくあるが、「大谷ルール」を採用した場合、先発投手は投手交代後にその試合での再登板はできなくなる。

なぜこのような規定があるかと言えば、野球では「再出場は認めない」ことを基本としているからだろう。

「大谷ルール」で、先発投手が交代して指名打者専門になった場合、その選手は、守備から一度完全に退いたことになる。その後に再登板を認めてしまうと、(打者としては出場していたものの)守備から退いていた選手が投手として再出場することになる。

ここでの想定される流れとしては、

「大谷ルール」で試合開始 → 投手交代・DH継続 → リリーフ登板
(投手と打者は同一) → (打者のみ継続・投手別) → (DHが投手、DH解除)

となるが、1項目(先発・DH兼任)から2項目(投手降板・DH専属)への交代は認められるが、(1項目を経た上での)2項目から3項目への交代(先発投手が投手交代してDH専門になった後の再登板)は禁じられている。

従来のケースでは、先発投手を再登板させるためにはベンチに退かせるわけにはいかず、先発投手は(慣れない)他の守備位置について攻撃と守備をこなさなければならないが、「大谷ルール」を使った上で再登板を認めてしまうと、先発投手は退いた後に守備をこなす必要もなく攻撃で打順が回ってきた時に打席に立てばいいだけで、体を休めることができる。これは、実質、(守備面に限った)再出場だと言えるだろう。

野球では再出場が認められていない、という点と、DH制を経由した再登板を認めると従来の(他の守備位置をこなす)再登板のケースと不公平、という点から、「大谷ルール」での再登板はできなくしたと考えられる。(個人の解釈です)

そのような理屈があるとしたら、(高校野球特別規則などの追加・改正等なども考慮しても)「大谷ルール」での投手の再登板を認めることは難しいだろう。

「大谷ルール」が先発投手の再登板を認めない以上、そして野球が「再出場を認めない」ことを基本としている以上、先発投手の再登板に備えることを前提とせざるを得ない事情があるチームにとっては、DH制(「大谷ルール」)は「使えない制度」だと言える。(そして、高校野球では、実情としては、そのようなチームがほとんどだと思える)。

いわゆる「大谷ルール」が、なぜ「大谷」という個人名で呼ばれているか、また、プロでも大谷選手以外に活用している例が希少なのか、そのことを考えたとき、果たしてこのルールが多くの選手の可能性を広げるものなのか、冷静になってみる必要がある。

補足:
仮に、(大谷ルールで降板後に)「(一度に限り)再登板を認める」などの特別規則を追加すれば、以上の問題点は解消するように見えるかもしれない。ただし、先発投手交代後にDHも交代して退いていた場合、再登板は完全に(守備攻撃の両方で)「再出場」となる問題や、あるいは、途中でDHが他の守備についたり投手が打席に入ったりでDHを解除していた場合、再登板した投手(元DH)のそれ以降の打順をどうするかがさらに問題となる(具体例は後述)。
一つの案としては、
「(大谷ルールで)先発した投手は、その試合中、打者としてDHを継続している限り、降板後も一度に限り再登板を認める」
などの条件を付けることで、再登板を認める余地はあるかもしれない。ただし、これは(先に述べた意図的な打席飛ばしのように)意図的な投球飛ばし(守備から退いてワンポイントリリーフを挟んでからの再登板)も可能にしてしまい、ひいては野球がルール上否定している「再出場」の定義に関わる問題なので、どこまで議論を広げるかは難しい面もあると思われる。(極端には、「大谷ルール」での投手に限らず通常の先発投手の再出場の可否、さらにはソフトボールのように、スターティングメンバー全員の一度に限ったリエントリーを認めるのか、という話にもなってくるだろう)。

オオタニサンがいないチームで「大谷ルール」をどう使いこなすか

「大谷ルール」を使いこなせるのはオオタニサンだけ、という身もふたもない結論になってしまったが、ルールとして認められるのなら、(オオタニサンではない)凡人なら凡人なりに、そのルールを使い倒す方法を考えるべきだろう。(悪く言えば抜け道を探す)。

先に述べたように、「大谷ルール」を使って、

・疑似的な偵察メンバーの形で、次の回や次の打席に投手や指名打者を後出しで交代できる
・怪我明けのテスト登板の形で、試合展開を気にせずに事前の準備ができる先発で1イニングだけ投げる

などの「利用方法」は考えられる。

もっとも、利用できるのは、前者は、(「予告先発」が採用されず)選手層と情報網の厚い「強豪」チーム、後者は、大谷選手ほどの実績のある投手打者の(投手)故障明けのケース、に限られるので、通常、利用できる機会はほとんどないかもしれない。(個人の解釈です)

この両者のケースは、言葉は悪いが、(前者の)偵察メンバーは「誰でもいい」が、(後者の)テスト登板させるには投手打者としての実績のある選手の故障明けという「レアな選手」のレアなケース、であり、「大谷ルール」で採用する選手は、「誰でもいい」、あるいは「レアな選手」という両極端な例だと言える。

ただ、この両極端なケースを、お互いに近づけて両立できる選手を想定できないかと考えたとき、

「大谷ルール」でDH選手に先発1イニングだけ全力で投げさせる

のはどうだろうか。

DH選手が先に決まっていて、先発投手が決まっていない(あるいは隠したい)時に、DH選手に「大谷ルール」で1イニング限定で先発させる、という発想だ。

極端な例を挙げると、パワー系の強打者で、守備とスタミナに問題がある「指名打者」でも、1イニング限定であれば、全力投球で何とかなるかもしれない。(個人の偏見を含みます。野球を舐めるな、という声が聞こえてきそう・・・)。

通常の(先発)投手は、できるだけ長いイニングを投げ抜くために、スタミナが求められる。そのスタミナが無いために打撃重視に転向した選手もいるかもしれない。1イニング限定なら、投手として(も)活躍する余地があるかもしれない。

2イニング目以降は、(相手のオーダーを確認した上で)第二先発に交代し、当人はDH打者として専念する。

クローザーの逆で、オープナーとでも言うのだろうか。「大谷ルール」を利用した「DHオープナー」(仮)という新たな役割だ。(テキトーに思いついた個人の名付けです)。

あるいは、候補となる適当な選手がいなければいないで、新たに育てていく。本格的な投球経験がなかったとしても、指名打者(候補)は、先発1イニングだけ全力投球できるように練習する。フルイニングのオオタニサンにはなれなくても、「1イニングのオオタニサン+残りDH」であれば、実現可能な目標とすることはできるかもしれない。

もちろん、スタミナもパワーもあるオオタニサンには無関係な話で、また、「リアルオオタニサン」を目標とするのなら、1イニングに限定する必要はない。ただ、オオタニサンではない多くの選手にとっては、チーム状況と自分の優位劣位を比較して、この「大谷ルール」によって、1イニング限定先発DH選手として、より輝ける場所を見つけられる可能性が広がるのかもしれない。

注:ここまで書いておいて何ですが、上記の内容を実行した際に生じた損害について、当ブログは一切責任を負いません。(何かを期待してここまで読んでくれた人にはゴメンナサイ)。
以上の提案は、単なる素人の個人的な思い付きであり、推奨するものではなく、成果を保証するものではありませんし、そもそも本当にルール上可能かどうかも保証していません。
ひょっとすると、何らかの既存のルールで禁じられている可能性はありますし、また、今後のルール改正などにより禁止されて無駄になってしまう可能性は常にあります。
例えば、ルール改正で、「先発が1イニングだけ投げることを想定しているときは事前に第二先発の投手を予告しておかなければならない(事前予告していない場合は先発は点を取られていない限り3イニングは交代できない)」とか、「(大谷ルールを)適用するにはTwo-Way Player登録されていることが必要」などの条件が追加されれば、上記の「DHオープナー」(仮称)のメリット(第二先発の後出し)は封じられると考えられます。
また、仮に今後、野球でも、「再登板」さらには「再出場」がルール上認められてしまえば、DHが(無理して)先発で1イニングだけ投げるという意義はほとんどなくなると考えられます。そもそも、トーナメントのような一発勝負の場で、チームで一番いい投手を先発させない冒険(悪手)をあえてやる必要はないようにも思えます。
以上は、野球素人が個人的に思いついたテキトーな事例であり、ルール上の正確さを保証するものではありません。詳しくは、公式な資格を持った専門家の意見を仰ぎ、正確な情報を得て、ご自身で判断してください。


(おまけ)もういっそのことソフトボールのDPを導入すればいいのにね

今回、「大谷ルール」の採用による様々なケースを考えたとき、常に頭の中にあったのは、

ソフトボールのDP(とその関連ルール)

だった。

当ブログでは、(東京2020オリンピック大会で2021年に神奈川で行われた)ソフトボール「カナダ対日本戦」での交代を巡る中断の理由を考えた際のことを記事にしていて[当ブログ記事(2021-7-26公開)]、その時に、

ソフトボールのDP(指名選手・DESIGNATED PLAYER)

についてのルールを、個人的に学んでいた。(個人の把握レベルの学びです)

2021年の時の記事では、ソフトボールの「特有のルール」について取り上げている。

今回の交代で関係するルールは、以下の二つだろう。

・リエントリー(再出場)
・DP(指名選手・DESIGNATED PLAYER)

これらのルールは、野球には無いため、なまじ野球のルールに詳しい人ほど、分かりにくかったと考えられる。

同上(参照2025-08-18)

DPの説明は(DHとの比較で)、個人的なまとめとして、

誤解を恐れずシンプルに言えば、

「DPは、打撃専門の選手で、野球でのDHみたいなものだが、野球とは違って、投手以外のポジションを守備専門にしてもいいし、途中で守備を兼任してもいい(ただし、途中で打撃専門と守備専門が完全に入れ替わるのはダメ)」

と、まとめられるだろう。(個人的なまとめであり、正確さに欠ける場合があります)

同上(参照2025-08-18)

とした。

ただ、恥ずかしながら、そのカナダ戦の中断理由については、個人的な結論(らしきもの)は出したものの、それが正解だったのかどうかは、未だに分からないままだ。(個人の結末です)

ソフトボールのDPは、それだけ複雑で分かりにくいルールで、個人的にも完全に理解できているのかは怪しいのだが、今回、「大谷ルール」で生まれるいろいろなケースでの問題点を、想定していけばいくほど、「ソフトボールのDPにすればいいのに」と思うことが多くなった。また同時に、「ソフトボールのDP(とその関連ルール)」は複雑だけど、いろいろなケースをカバーできるよう矛盾がないように整えられている、と改めて感心した。(個人の感心です)

ソフトボールのDPを知ったうえで、改めて野球のDHルールを読んだ時、「これは問題となる可能性がある」と感じたのは、

・指名打者が投手以外の守備位置についた場合は、投手はその元守備位置選手の打順を引き継ぐ

とした箇所だった(個人のルール理解によるまとめで正確な表現ではない場合があります)。

DH選手が(投手以外の)守備に入ったことで、その守備位置に元いた(退いた)選手の打撃順に、投手(元打撃なし)が入るのは、理屈としては理解できる。

DHが守備に入ったことでDH制は解除され、9人で守備と攻撃をこなさなければならないため、投手(専門)だった選手がその打順に入れば、(一応は)収まる。「投手はDHとセットだからDHの打順に入るべきでは?」と思うかもしれないが、DHにはすでにDHの選手が入っていて、このケースでは守備にもついて守備と打撃で継続している。かといって、DHがその元守備位置にいた選手の打順に入るのはもっとおかしい。打順の順番が変わってしまうからだ。それを認めてしまうと打席が一巡する前に同じ選手が二打席立ててしまうことになる。同様に、その空いた打順を飛ばすことも許されない。アウトカウントによる攻守交替と打順の巡りが野球の醍醐味の一つであり、どんな好打者(または貧打者?)でも打順に従って9人で順番に回して打つことが基本だからだ。したがって、投手専任だった選手が空いた打順にそのまま入って、9人での攻撃で打順の巡りを維持するのはルールとして理解できる。

しかし、「大谷ルール」でスタートし、途中でDHを別選手に交代して(投手は継続)、そのDHが(投手以外の)守備位置についたとき、矛盾が出てくる。上記のルールに従えば、投手はその守備位置に元いた選手の打順に入ることになるが、先発時点で「投手」が「DH」として打順に一度立っているので、試合中に違う打順に代わってしまうことになる。

分かりにくいと思うので、(架空の)登場人物と守備位置を絞って具体例を出す。

登場人物
・オータニサン:この物語の主人公。先発投手と打順1番DHで「大谷ルール」を使いこなす。
・ピータニ:打順2番一塁手で先発出場。主人公とは幼馴染でライバルだったが今ではよき理解者。
・キュータニ:途中からDHとして出場、その後一塁守備を任される。おっちょこちょいで主人公の弟分的存在。

(注:登場人物の名前は全て架空で、実在する人物と一切関係ありません。またルールとは全く関係ない設定が付属している場合があります。以下例示した試合経過等も、個人の偏見が含まれている場合があります。)

<先発メンバー発表 先攻>
先発投手 オータニサン
1番DH オータニサン
2番一塁手 ピータニ
3番以下省略
控え キュータニほか

<試合開始 1回表>
1番 オータニサン ホームラン
2番 ピータニ以下省略

<1回裏 守備>
投手 オータニサン
一塁手 ピータニ以下省略

<・・・途中経過省略・・・>

<交代1 「n回表」攻撃時>
代打 1番 オータニサン → キュータニ 三振でスリーアウトチェンジ

<交代2 「n回裏」守備時>
交代 一塁手 ピータニ → 代打で出たキュータニが一塁守備に(DH制の解除)
(投手 オータニサンは続投)

<(n+1)回表攻撃>
先頭バッター
2番 誰?

という問題だ。

先発2番一塁手のピータニは、代打DHで出場したキュータニが一塁守備についたので、すでにベンチに退いている。この場合、先に述べたルールでは、投手が元守備位置の打順に入ることになるが、このケースでは、投手のオータニサンが2番打者を引き継ぐことになる。ところが、オータニサンは先発で1番打者を打っていた。1番打者が試合中に再び2番で打つということになってしまう。

打順・守備先発交代1交代2次の攻撃回(投手が打順を引き継ぐルールの場合)
投手オータニサン→継続(投手専任)→継続→継続(オータニサン)
1番打者オータニサン→キュータニ→継続→継続(キュータニ)
守備位置DH・投手DH→一塁手→一塁手
2番打者ピータニ交代退場→ ?オータニサン?
守備位置一塁手→ ?→ 投手?

もちろん、「別に打順が途中で代わってもいいじゃないか(オオタニサンの打席がまた見れるのなら)」と言ってしまえばそれまでだが、試合中に打順が代わることは、ルールで禁じられている。そもそも、「大谷ルール」では、(投手の再登板が禁じられているのと同様に)投手を継続していたとしても一度DHを代わった後に再びDHに戻ることは許されていない。

あるいは、「元守備位置にいた2番一塁手ピータニがDHで継続すればいいのでは(打順と選手はそのままで一塁手とDHとの「守備」交換交代という解釈)」が一番簡単な解決策のように見えるが、DHも、「指名打者の打撃の順番を変えることは許されない」と明記されている(DHが1番から2番に移るのは許されない。さらに言うと、DHが守備についた時点でDH制は解除されているので、「DH再導入の禁止」にも引っかかってしまう。個人のルール確認です)。

投手が入るのもダメで、元いた選手がDHで入るのもダメであれば、どうするのか?

残念ながら、私のルール理解と検索能力では、この疑問は解消できなかった。(個人の能力です)。

また、(個人で検索した限りでは)実例も探し出せなかったので、どのように対処するかは想像するしかない。(もっとも、打撃に期待してわざわざ「大谷ルール」を適用した上でDHにした打者に対し、投手を継続させながら代打を出す意味自体が分からないので、実際に行われることはないかもしれないが)。

備考:
これらの矛盾点を解消するために、想像できそうなもので、現実的な対処法の一つが、
「空いた打順(上記の例では2番)に代打を出す(出さなければならない)」
とすることだろう。
これなら、「打順を途中で変えてはいけない」、「DHの打順を変えてはいけない」、「DHは解除後に再導入できない」、「交代で退いた選手は再出場できない」などの禁止事項を(無理矢理こじつけてなんとか)クリアしている。
ただ、これでも、問題は残る。イニングをまたいで次の打席が回ってきた時、再び「(別の)代打を出さなければならない」のか、それとも「(その後に守備についておらず守備時の交代宣告をしていないので)引き続き同じ代打が打席に立てる」とするかは、議論が必要だろう。例えば、(イニングをまたぐたびに)「代打を出さなければならない」とした場合は、控え選手が枯渇する問題が出てくる(イニングごとにわざと打席を回して代わりに出す選手をいなくさせて相手チームを棄権に追い込むことも可能になる)。また「引き続き同じ代打が打席に立てる」とした場合は、(実質的な)DHの復活と打順移動であり、従来の禁止事項を犯している疑いはぬぐえず、そこからさらにその打者が絡む守備交代を行った場合、ルールの整合性を求めると収拾がつかなくなる。

注:以上はおおざっぱな素人個人のルール理解で、正確でない場合や誤っている可能性もあります。なんなら、すでに解決済みの問題を、誤った前提で誤った議論を延々としているだけの可能性は高いです。ただ、以上の疑問点は、個人的な検索能力では解決できなかったので、正確な内容を知りたい方は、公式な資格を持った専門家に確認してください。(丸投げ)

この、野球では矛盾したケースだが、ソフトボールでは、あっさり解決している。

DH(ソフトボールではDP)が守備に入った場合、その守備にいた選手は守備ではじき出されたことになるが打者専門として引き続き打席に立てる。ソフトボールでは、その選手は、OPO(OFFENSIVE PLAYER ONLY/打撃専門選手)と新たな名称で呼ばれることになる。これであれば、打順の変更もなく、(実質的に)打者専門/投手専門制を継続できる。

上記の例で言えば、代打DHのキュータニが守備(一塁手)についた時点で、野球だと元一塁手守備の2番ピータニは退場扱いになるが、ソフトボールではピータニは守備を退いたOPO(打撃専門)として打撃のみを打順そのままで継続できる。もちろん投手は投手専門(守備専門)としてそのまま継続するので、(先発時と異なる)打順に入る必要もない。

補足:
ヘリクツを言うようだが、野球での「DHが守備についたらDHは解除」、「DHの打順を変えることは許されない」(個人的なまとめで正確な表現ではありません)などのルールが引っかかっているのなら、(ソフトボールのように)このケースで代わった元の打順の選手の守備位置を(DHではなく)新たな名称OPOとでもしてしまえば、ルールをすり抜けることは可能かもしれない。「それはDHで認められていないのですよね。私が行っているのはDHではなくOPOですよ」、とかなんとか。

もっともこれが、ソフトボールでは成立可能になったのは、野球では認めていない(いくつかの基本的な)ルールを認めたからだ。

ソフトボールのDPは
「守備専門のポジションは投手以外でも可」
「途中で(守備と)兼任してもOK」
「兼任後に再びDP(打撃専門)に戻ってもOK(だけどDPが守備専門に入れ替わるはダメ)」

等と、自由度は高い。(DP側から見た、個人的なルール理解による簡単なまとめであり、正確ではない場合があります。)

これらが認められるようになったのは、ソフトボールでは

「再出場禁止ルール」を緩和

したことによる要因が大きい。(具体的には、スターティングメンバーはいったん退いた後の一度に限った再出場が可能になった。個人のルール理解で正確な表現ではない可能性があります。)

逆に言えば、野球は「再出場禁止ルール」を徹底しているからこそ、これらの矛盾点は解決できない。

上記の例でも、DHが守備についたことでDHは解除され9人で守備と攻撃をこなさなければならなくなり、守備から弾き飛ばされた選手(2番ピータニ)が退場扱いになってしまい、その後の矛盾が生じている。

野球で、「DHの再導入」を不可にしているのも、「(大谷ルール)で投手を退いた後の再登板」を禁止しているのも、野球が「再出場禁止ルール」を徹底しているからだろう。

野球では、「再出場」を厳禁としているからこそ、それを封じるルールが明文化されているのだが、(「大谷ルール」のように)部分的にほかの何かを認めると、どこかで整合性が取れなくなってしまうことが出てしまう。

それを防ごうとすると、さらに細かく規定する必要が出てきて、その変更された規定が、また、別の規定に引っかかって・・・、というようなことを繰り返してしまう。

その根本となる原因が、

「再出場禁止ルール」

であるのなら、それを固持し続ける限り、何かルールを変えるたびに、どこかで矛盾が出てくるだろう。(今回の例のように)。

もっともこれは野球の理念にかかわる話なので、ここでその可否を問うことはしない。(中には、「9人で守備と攻撃をするのが基本でDHすら邪道だ」と主張する人もいれば、「(アイスホッケーのように)自由な交代を認めればもっと盛り上がる」とする人もいるかもしれない)。

ただ、「大谷ルール」で「可能性が広げられる」一方で、(見過ごさがれがちな)「可能性が狭められる」ケースを考えたとき、

「再出場禁止ルール」の緩和

は、避けて通ることはできない話で、それを認めるのであれば、

ソフトボールのDP(とその関連ルール)

という先例があるのだから、そこから学ぶことが、矛盾を解消する糸口になるかもしれない。


まとめ

  • 高校野球にDH制と「大谷ルール」が導入される方向という話
  • DH制のルールと制限いろいろ
  • 「大谷ルール」を作らせたオオタニサンがスゴイ
  • 「予告先発制度」と「大谷ルール」について
  • オオタニサンしか使えない「大谷ルール」をオオタニサンじゃない選手はどう使うか
  • 「再出場」できない「大谷ルール」の問題点について
  • 代わったDHが(投手以外の)守備についたときの「大谷ルール」の矛盾点について
  • 「ソフトボールのDP」について

注:以上は、公式な資格を持っていない野球素人が、報道されている内容やネット上にあるルール規則等を参考にして、話を進めたもので、ここで述べた内容の正確性や実現性については、一切保証できません。詳しくは、公式な資格を持っている専門員に確認してください。

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