野球漫画「ドカベン」で有名な「ルールブックの盲点の1点」のケースを初心者がいかに理解したか

野球のルールを知っている人でも、時々、「今の判定は何?」、と戸惑うことがある。

その珍しいケースとして、有名なのが、水島新司氏の野球漫画『ドカベン』で描かれた、「ルールブックの盲点の1点」、だ。

2012年の夏の甲子園で、同様のケースがあったことから、話題になり、今でも、時折、このケースについて議論が起こる。

「ルールの不備だ」
「これはタッチアップ」「いや、正確にはタッチアップではない」
「一塁でアウトになる前にホームインしたら自動的に得点?」「いや、打者走者が一塁で到達前にアウトになる場合は違う」

野球のルールを知っているからこそ、勘違いしやすい面もある。こういった議論を生みやすいこのケースを、観戦のみの野球未経験者がいかに理解したかを報告する。

[当記事は、前身ブログ「はじめはみんな初心者だ」での記事「ドカベンで有名な「ルールブックの盲点の1点」のケースをいかに理解するか」(公開日:2017/11/26)を、加筆・修正したものです。当ブログでの公開日:2018/06/17]

1.実際の事例:2012年夏の甲子園大会、済々黌高校(熊本)対鳴門高校(徳島)戦

まず状況を、簡易的に再現する。

(1)一死一塁三塁。

(2)打球はショートライナー。遊撃手が捕球して、アウトの宣告(打者アウト:二死)。

(3)一塁走者と三塁走者飛び出している。

(4)打球を取った遊撃手は併殺を狙い一塁に送球。一方、三塁走者はそのまま本塁へと走る。

(5)三塁走者が本塁を駆け抜けたあとに、一塁手がベースを踏みながらボールを捕球し、一塁走者が戻れずアウトの宣告(三死)。

(6)内野陣がそのままファールラインを超えてベンチに戻る。

(7)次の回へ行くが、その前に1点が加わり、審判の説明。

2.誤解されやすい点

「ルールブックの盲点」というと、まるでルールの不備のように見えるが、実際には逆で、ルール通りに行われた結果に過ぎない

上記の例も、ルール通りに行われている。

ただ、初心者が違和感を感じてしまう点は

1.フライやライナーを取ったときは、走者は帰塁しなければならないのに、今回は明らかに三塁走者が帰塁していないからアウトなのでは?
2.一塁でアウトにしているから、その前のホームインは認められないのでは?

の2点であろう。

ある程度の野球のルールを知っている人だからこそ、疑問に思いがちな点である。

3.フライやライナーのときのランナーをアウトにするには

疑問点1に関して、

「打球を地面につかないまま直接捕球しているのにランナーが帰塁せずに次の塁に進んだ場合」

だが、これは、守備側がアウトにしない限りは生き続ける。

走者に帰塁義務は生じるが、戻っていなくても、守備側がボールを持って(ランナーにタッチするか)その元のベースを踏まない限りアウトにならないからだ。

「明らかにスタートが早いからアウトだ」と言っても、アウトの手続きを踏まない限り、それは通用しない。

これはルールの不備ではない。

例えば、いくらスタートが早くて帰塁の義務を果たしていない場合でも、どのタイミングでアウトの宣告をするかを考えればいい。
帰塁せずに次の塁へと進んだとしても、その時点ではまだ帰塁義務を放棄したわけでなく、帰塁してセーフになるチャンスはある。プレイ中にここで勝手に審判がアウトを宣告するわけにはいかない。
ランナーが帰塁義務を果たしていないのに、守備陣が気付かず次のプレーに移れば、守備陣がアウトアピールを放棄したことになり、結果として、ランナーの帰塁義務は解除される。

つまり、フライやライナーの時の走者をアウトにするには、アウトのアピールが必要であり、それは、離塁が早かったことが明らかだろうがなかろうがアピールしなければアウトにならない、という、当たり前のルールだ。

4.一塁でアウトにしたら、その前のホームインは認められないのでは

疑問点2については、単純で、

ホームインが認められないのは、バッター走者が一塁でフォースアウトになった場合である。

より正確に言うと、

フォースアウトと得点の関係
第3アウトがフォースアウトの場合、または他の規則により打者走者が一塁に触れる前にアウトになった場合は、たとえ他の走者が先に本塁を踏んでいても得点は記録されない

https://ja.wikipedia.org/wiki/フォースプレイ
(参照2018-06-18)

例えば、一死一・三塁で、内野ゴロゲッツーの場合、打者走者が一塁に到達する前に三塁ランナーがホームインしても得点は認められない。

二死三塁からのスクイズが無意味なのもこのルール通りである。(いくら三塁ランナーのホームインが早くても、打者が一塁でフォースアウトになれば得点は認められないので、二死からの「自分が(一塁で)死んでも得点」は成立しない。)

このルールに関しても、不備ではない。

先の、一死一・三塁で内野ゴロゲッツーの場合もそうだが、「スリーアウトになる前にホームを踏めばすべて得点」と認めてしまうと、他にも例えば、二死満塁から大飛球を放った時、ボールが落ちてくる前にランナーが生還したらボールを取ってアウトにしてもその得点を認めるのか、ということになり、混乱することになる。

5.盲点のひっかけ問題

一つ一つのルールを見れば、盲点でも不備でも何でもない。

だが、それが重なった時、これまで野球を何年もプレーした人でも、盲点のように感じてしまう。

上記の例をもう一度振り返ろう。

(1)一死一塁三塁。

これが仮にノーアウト・もしくはツーアウトであれば、以下の状況は起こらなかった。

(2)打球はショートライナー。遊撃手が捕球して、アウトの宣告(打者アウト:二死)。

ここで打者がアウトになったため、第三アウトがフォースプレイではなくなり、スリーアウト前に走者がホームを踏めば得点は認められることになった。

(3)一塁走者と三塁走者飛び出している。
(4)打球を取った遊撃手は併殺を狙い一塁に送球。一方、三塁走者はそのまま本塁へと走る。
(5)三塁走者が本塁を駆け抜けたあとに、一塁手がベースを踏みながらボールを捕球し、一塁走者が戻れずアウトの宣告(三死)。

「ここで一塁じゃなくて三塁に投げていれば問題なかったのに」と思う人もいるだろう。だが、この場合、ショートにライナーでボールが飛んだ時には、サードも打球に反応してショート方面へ体が向かっている。そこから三塁ベースに戻るのに時間が掛かりそうだったので、ショートも確実にアウトを取れる一塁へ慎重に投げたと想像できる。

(6)内野陣がそのままファールラインを超えてベンチに戻る。

一塁走者でスリーアウトを取る前に三塁走者がホームを踏んだが、その時点では、得点は確定していない。三塁走者が帰塁義務を果たしていないため、守備側がアウトをアピールできるからだ。「すでにスリーアウトを取っているからもうアピールできない」ことはなく、スリーアウトを取った後でも、アピールプレイによってホームを踏んだ走者をアウトにできることをルール上認められている。(「第4アウト」「第3アウトの置き換え」と呼ばれる)。逆に言えば、ルール上では、今回のようなケースが起こることは想定済みであり、その対処方法も準備済みなのである。
しかしこの実際のケースでは、それに気づかず、アピールをしないままベンチに戻ってしまった。

(7)次の回へ行くが、その前に1点が加わり、審判の説明。

アピールがなくベンチに戻ったため、1点が認められた。念のため審判がマイクを持って説明した。(が、多くの人は?のままだっただろう。)

6.対策は?

以上は、まれなケースではあるが、作戦としてこれを用いることはあり得るだろうか。

結論から言うと、作戦とするにはリスクがありすぎる。まず、大前提として、相手がこのルールを理解していれば、失敗に終わる。「ドカベンのルールブックの盲点」ということで話題になったこともあり、ある程度の周知度も上がったことを考えれば、成功する確率はより下がったと言えるだろう。

また仮にこの状況を意図的に作り出して成功したとしても、実際には一死一三塁のチャンスから二つのアウトと引き換えに1点を取ってチェンジしたに過ぎず、作戦としては効率が悪い。

だが、今回のケースのように、ショートライナーで一三塁走者とも戻れないと判断した時、イチかバチかで挑戦するのはありだろう。
ただ、よほど意識していないと、とっさに対応できないだろうから、難しい。
逆に言えば、このケースを成功させたのは、日ごろから意識していた証拠だろう。

守備側にしてみれば、フライを取った時点でフォースアウトが解除されてランナーはすべてフリーだと、認識を切り替えるしかないだろう。まずは、得点を許さない、ことを常に意識するぐらいしかないのではないのだろうか。

プレーしているとなかなか気が回らないことだが、今回の件では審判が見逃さず正確にルール通りのジャッジをしたように、ルールを理解し、あらゆる状況を予想して最善を尽くすしかないのだろう。

まとめ

  • 「ルールブックの盲点の1点」を初心者がいかに理解したか
  • 実はルールの盲点でも不備でもなく、ルール通りのプレーとジャッジ
  • 「帰塁義務とアピールプレー」と「フォースアウトと得点」をそれぞれ理解
  • 稀な例の重なりで、あたかも盲点のように見えた
  • 選手も審判も、常日頃の準備で対策するのみ

(参考文献)
https://ja.wikipedia.org/wiki/第4アウト
(参照2018-06-18)

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